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メロン
  
 
画像準備中
(準備中のまま忘れたりして)
 
 メロンにはさまざまな品種があり、日本でよく食べられているものは、ヨーロッパ原産のメロンと日本のマクワウリを交配させて作った品種が多いらしい。いろいろなメロンを食べたら紹介する予定。予定のまま終わるかもしれないけど。

 メロンについては>ここも見よ

 
 
マクワウリ(真桑瓜)[関連記事][関連記事]
 
 マクワウリというのは、メロンという種のうち、中国や日本で栽培化されたものである。各地で独自に栽培されたため色や形の異なる品種がたくさん存在しており、地方語とにさまざまな名前で呼ばれていたが、岐阜県真桑村産のものが有名だったことからマクワウリと総称されるようになった。あまい瓜という意味で甜瓜(てんか)という漢名でも呼ばれる。

 1962年、マクワウリのある品種と西洋種のメロンを交配させたプリンスメロンが発表されると、マクワウリ自体の栽培は衰退していった。現在でもわずかながら各地で独自の品種が栽培されている。

 以下は古い文献に見えるマクワウリの記録を抜き書きしたもの。

■『本草綱目啓蒙』江戸時代後期

マクワウリ
 マクワウリは濃州真桑村(現在の岐阜県真正町)産の甜瓜で、隣村で栽培しても形や味が同じにならない。長さ四寸(12cm)、幅は元が一寸八部(5cmくらい)、末は二寸余(6cm強)で皮は緑、熟すと黄色くなり、緑色の縞がある。果肉は色が浅い。中国にもこれと同じ種がある。崑山円明村の原産で蒜同瓜という。

京都に多いもの(名称不明、あるいは谷川瓜と同一のものかもしれない)
 その形は大きく長さ六七寸(18-21cm)、短くて丸いものが多い。

谷川瓜
 京都では西岡川勝寺村で谷川瓜が作られている。色は黄赤(オレンジ?)で皮に襞(ひだ)があり、襞の内は黄色で深緑の斑がある。

ボンデン瓜(梵天瓜?)
 皮が白い。和州奈良の原産。

田村瓜
 皮は赤味をおび果肉は白い。尾州に産する。

ネズミウリ、ネズミワクワ
 マクワウリに似た形で味は甘く上品である。他の土地に植えれば二年目から品質が落ちる。越前(福井県中北部)に産する。

味瓜(アジウリ)
 雲州(出雲)、作州(岡山県北部)での呼び名。

 上記のほかに甜瓜、ホソヂ、唐瓜(カラウリ)、甘瓜(アマウリ)などの別名も記録されている。
 

■『和漢三才図会』江戸時代中期
 瓜の類はそれぞれ異なっている。その用い方には二種ある。ひとつは果物として供するもので、甜瓜(まくわ)、西瓜(すいか)などがそれである。もうひとつは蔬菜として供するもので、胡瓜(きゅうり)・越瓜(しろうり)などである。

 甜瓜(てんか)は、甘瓜(かんか)、果瓜(かか)ともいい、熟すと蔕(へた)が落ちるものをホソチと呼んでいたが今では真桑瓜と呼ぶ。

 甜瓜は濃州の真桑村から出るものが良い。それで一般に甜瓜のことを真桑という。他に武州の川越・尾張の青鷺・洛(京都)の東寺のものが上等とされ、駿州の府中・羽州の七浦・摂州の氷野・泉州堺の舳松も有名である。参州(三河)の銀甜瓜は白色に銀のすじ加州(加賀)の田中・和州の梵天瓜は白色。

 種を植えるには、前の日に砂糖とつるし柿の肉を水に漬け、そこに瓜の種を浸して一晩たったものをまくと美味しい瓜ができる。

※メロン類の種を甘い液に浸してからまくと甘い実がなるというのは二千年前のローマでも同様のことをしていたらしい(参考[広告]>雄山閣 『プリニウスの博物誌(全3巻)icon』)。


■『本草綱目』中国の百科事典で『和漢…』より100年くらい古いもの

 甜瓜(てんか)は諸々の瓜よりも甘いことからこの名がついた(甜は甘いという意味)。二、三月に種をまき、蔓になる。六月に黄色い花が咲く。六、七月に瓜が熟す。その種類は多く、丸いもの、長いもの、尖ったもの、平たいものがあり、大きなものでさしわたし一尺(30cm)、小さなものはひとひねりぐらい。かどのあるものとないものがあり、色も、青・緑・黄斑・粒斑・白いすじの入ったの、黄色いすじの入ったものなどがある。果肉も白いのと紅いのがあり、タネも黄・赤・白・黒がある。…以上は『和漢…』からの孫引き

※小学館『食材図典icon』に中国のマクワウリの写真があるが、『本草綱目』の記述どおり色や形が様々で、規格品ばかり見ている日本人の目にはたいそうユニークなものに見える。不揃いな実を無造作に積み上げた状態の写真だったので、市場かなにかにあったのを写したものではないかと思う。種類がたくさんあるというよりは、品種改良が進んでおらず、色や形が不揃いな実がなってしまうのではないか?

 
マクワウリについては>ここも見よ! 
 
検索でみつけた
マクワウリの品種
金マクワ
金瓜系のいろいろ
 金マクワとか言われる皮の黄色いマクワウリ。形は俵型か、柄に近い部分がやや細くなった洋梨型。皮に条斑(すじ)があることも。果肉は白〜薄い黄色のものが多いようだ。金城、あかねまくわ、金銘、金太郎、黄球甜瓜、金俵、黄冠、金蝶マクワ(金皮)。銀泉甜瓜、銀閣甜瓜(金皮で緑または白の線)。福岡ではこの系統のものをお盆のお供えにするという。
南部金
南部金


 上のカボチャのようなものもマクワウリ。南部金と呼ばれている。カボチャのような丸形で、皮は濃いオレンジ。緑の条斑がある。果肉の色はプリンスメロンに似た薄い緑。



皮が緑のもの

 形は俵型、または洋梨型で、皮が濃い緑。条斑があるものが多い。北海カンロ(北海道)、甘露(北海道・東北各地)、落瓜(愛知)など。皮が濃い緑で写真を見るかぎりでは白くブルームを吹いた感じの北海甘あじうり。皮が薄い緑色の網干メロン(姫路)など。
皮が白いもの
 ほかに、コヒメウリなどという小さくて丸形、皮が白いもの(新潟で作られているらしい)をマクワウリの仲間と紹介される場合があるが、これは var.hime という別の変種だそうだ。新潟の新津市や村上市ではこれをお盆のお供えにする。参考>国立歴史民族博物館

 マクワウリについてメルマガに書いたところ、読者の方がいくつかの情報をくださったので、さらに情報を追加して下にメモする。

甘露・北海カンロ(北海道)
 北海道では甘露または北海カンロという品種が現在でも栽培されており、それらはマクワウリではなくアジウリと呼ばれているそうだ。
 甘露はマクワウリ(アジウリ)の品種として昔から知られているものらしい。思うに北海カンロは甘露をさらに改良した新品種ではないかと想像する。月形町に産するというので、月形町農協に連絡をとろうとしたところ、公式サイトのメールフォーム(あるいはメーラーが起動するだけかもしれないが)が不備で動作せず、連絡がとれなかった。
 写真で見る限り北海カンロは皮が緑で深緑の縞があり、果肉は黄緑色。味は甘いとのこと。形は長めの楕円。ただ今売り出し中の品種らしく通販サイトもあちこちにあるが、時期を逸してしまったのかどこも売り切れていた(8月中旬現在)。有楽町にある北海道のアンテナショップ「どさんこプラザ」にてアジウリについて尋ねたところ、店員はそんなもの知らないと言っていた。あまり笑えない話だ。

黄金みすず(福岡)
 福岡では黄金みすずというものがあり、お盆のお供え用に出回るそうである。皮は黄色で果肉は白。味はメロンほどではないものの甘いという。形は柄の部分がいくらか尖った楕円で北海カンロよりは短く小さめ。黄金みすずで検索したが一件もひっかからなかった。おそらく金真桑と呼ばれる系統のものであろうと想像するが未確認。

マクワウリ(岐阜県)
 岐阜県本巣市真正町(旧・真桑村)に産するものは、形は楕円で柄に近い方がいくらか細く、皮は緑で縞がある。熟すと黄色くなり、縞も残る。これは『本草綱目啓蒙』の記述にあるマクワウリの特徴と一致する。

 
 
龍ヶ崎産のマクワウリ
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茨城県龍ヶ崎市産の「真桑瓜」
マクワウリ
クリックで掌との比較写真

 上の写真のものは茨城県龍ヶ崎産のもので品種名は不明。おそらく金真桑と呼ばれる品種の系統と思うが未確認。皮はすべすべで黄色。形は洋なし型。

瓜ふたつ?
マクワウリ

 マクワウリは甘い果物であると話に聞いていたが、写真のものを食べてみたところ、メロンよりも果肉が固く、洋ナシのような食感。写真のものはお世辞にも甘いとは言えず、キュウリにくらべればわずかに甘みがある程度。これがマクワウリ本来の味なのだろうか?

 そこで販売店(東急ストア金町店)に問い合わせたところ「摘果マクワなので野菜として漬け物などにして食べるためのものである」との回答だった。しかし、パッケージにはただ「真桑瓜」としかなく、品名だけ見たら果物だと思うのが常識的な判断だと思う。野菜として売るなら漬物用と表記すべきだ。とにかく甘くて美味しい果物のマクワウリを食べたいと思い、龍ヶ崎の農協にメールしようと思ったが、サイトにあった問い合わせフォームはエラーがでて使えない。この件に関しては非常にムカついている。
 

 
 
ナシウリ(梨瓜)
 
千葉市・飯田牧場さんより提供の
「ナシウリ」
ナシウリ(マクワウリ)
クリックで掌との比較写真

ナシウリ(マクワウリ)

 甘いマクワウリはどこにあるのじゃーと叫んでいたら、千葉市の飯田牧場さんが是非食べてみてくださいと上の写真のような瓜をくださった。千葉で昔から作られていたマクワウリで地元ではナシウリと呼ばれているという。昭和30年代までは千葉市一帯で普通に作られていたもので、メロンの普及とともに姿を消して行ったそうである。メロンよりも傷みやすいため、流通事情が悪かった当時、メロンに勝てなかったのではないあとのこと。

 皮の表面はプリンスメロンのようにすべすべで色は白に近い。形はへたの方がわずかにすぼまった俵型。リンゴや梨のように外側の皮を薄くむいて種をとり、縦に6〜8分割にして食べるのがいいそうだ。果肉に独特の歯ごたえがあるので、メロンのようにスプーンですくって食べたりはしない。

ナシウリ(マクワウリ)
ナシウリ(マクワウリ)
ナシウリ(マクワウリ)
 食べてみると、とても不思議な食感。メロンのように柔らかくはなく、かといってナシのように固くもなくて、ショリっとさわやかな歯切れで、しかも口の中でとけていく。おまけに甘い。その甘さもメロンのような甘さではなく、もっとサラッとして涼しい甘さだ。こういうのが食べたかったのだと膝を打つ味。果物屋さんに並んでいたら買い占めたくなる。

 なお、飯田さんによると、地元(千葉)ではマクワウリと呼ばれているものは皮が黄色くて、ナシウリのほうが甘いということである。そうかと思えば新潟あたりでは皮の黄色いマクワウリをナシウリと呼ぶこともあるようなので、呼び名に関しては地方ごとにまったく違っているということをあらためて実感する。

 茨城県でもナシウリを栽培しているらしいことがこのへんに2004年の日付で書かれている。写真を見るかぎり飯田さんにいただいたナシウリとほぼ同じものに見える。

 江西省総合購物紹介(中国語)には江西省の梨瓜について説明した部分がある。「江西省の"梨瓜"は中国の甜瓜(マクワウリ)の中でも珍品とされるものである。その色は白く、形は梨に似て、食べてみるとみずみずしい。重さは 1〜2 斤ほど。その大きさと形は有名な蘭州白瓜に似ている。蘭州白瓜(白蘭瓜)は甘くて蜂蜜のようで、果肉だけを食べて皮は食べない。江西梨瓜は皮の薄い瓜の仲間に属し、薄い皮を一緒に食べることで心地よい澄んだ食感をかもしだす。澄・甘・香の三点は江西梨瓜の特徴をよくまとめた言葉である。江西省上饒地区の梨瓜は、悠久の歴史を持ち品質が良いため、市場の需要に応えて普及しはじめている。江西全省で栽培されており、夏の主要な青果のひとつである」 皮の色が白く、皮が薄く、食感がよく、香り高い、味が澄んでいる、という説明が上に紹介した千葉県のナシウリと似ている。残念ながら写真はみつからなかった。「梨に似ている」と書いてあるので形は千葉のものより丸いのかもしれない(あるいは洋梨型か?)。
 

検索用キーワード:ナシウリ、ナシ瓜、梨瓜、なしうり、なし瓜、千葉

ナシウリ(マクワウリ)
ナシウリは香りも最高。
箱を開けた時からいいにおいがしてました。
収穫は8〜9月だそうです。

関連
 2006年、わたくしもナシウリを栽培したんですけどね

 
 
北海甘露
(ほっかいかんろ 北海カンロ ホッカイカンロ)
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北海甘露
 ついにみつけた北海カンロ! イトーヨーカドー亀有Ario店の北海道の美味しい物をあつめた特設会場にて。1個750円なり……げぇっ、高い!! となりにあった夕張メロンは3500円もしてたから比較論で言えば安いんだけどさ。でも買ったわ。これを逃したらいつ食べられるかわかんないもの。

 見た目はこのとおり、ハグラウリそっくり。一瞬ただのハグラだと思って通り過ぎそうになったほど。値札に「カンロメロン」と書いてあるけれど、メロンと書かれていなかったら甘くない漬物用の瓜だと思われてしまいそう。

 
北海甘露
 これは月形町産。浦臼というところでも作っていて、浦臼カンロと呼ばれているけれど同じ品種だと読者の方が教えてくれた。

 ヨーカドーの特設会場にはメロンのいい香りが漂っていたけれど、となりにあった夕張メロンの香りかと思っていた。ところがお金をはらって店から出ても、買い物袋の中からえもいわれぬ良い香りがずっとしている。こ、これは……下手なメロンよりよほどかぐわしい。いや、果物屋さんで8000円くらいするマスクメロンに負けていないんじゃないだろうか。こんなに良い香りのするものだったなんて。

北海甘露
 切ってみた。なんという鮮やかな緑。これが美味しくないわけがない……と思ったんだけどね、意外なことに大して甘くないの。だからといって不味いんではなくて、香りから想像するほどの甘みを感じない。果肉は豊かで、やわらかくもなければ固くもない。ナシウリみたいにサクサクするんじゃなく、プリンスメロンに似た食感。いや、食感で言えば安いプリンスより北海甘露のほうが上かもしれない。なんだろうこの感じは。たとえて言うなら「今日は暑いから甘露でも買って食べましょうね」「わーい。甘露甘露ー」なんて会話をしながら八百屋へ行き、一山 500円(ここポイント)の甘露を買って帰り、井戸水で冷やしたのを、午後の一番暑い時間に縁側でかぶりつく……そんな夏休みの味がする。この美しく素朴な瓜で夏休みを彩りたい。そんな気持ちがする。でも 1個 750円もするんだよね(しかも常には買えないし……orz)。
 
北海甘露
 さらに追熟させたらどうかと思い、一週間ほど室温で放置して、いくらか皮が傷み始めたころに食べてみた。残念ながら甘さはほとんど変わらなかった。

北海甘露

 果肉は少しやわらかくなっていた。熟れすぎたのも美味しい。
 やっぱりきれい。夏休みの色だなあ。
 
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