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             珍獣の食卓2             

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 突然ですが大変です。謎の物体が送られてきました。
 薄い緑色をした楕円形の物体です。
 尻尾みたいなのついてます。
 長さは 25cm くらい、太さは直径で 15cm くらいです。

↓謎の物体
./yugao00d.jpg

 さるスジから送ってもらったものですが、一体なんだと思います?

 ぱっと見た時「ウリ…だけど何瓜?」って感じでした。写真で見
たことのある長トウガン(ウリ科)にも似てましたが、長トウガン
は表面に粉をふいて、細かい毛が生えてるらしいんです。でもこれ
はつるつるしてる。

 宅配便のラベルを見たら「ユウガオ」って書いてありました(注
:ユウガオもウリ科)。

 へー、この長いのがユウガオ!

 ユウガオはカンピョウ(干瓢)の原料です。巻きずしに入れたり、
昆布巻きを結んだりするカンピョウです。でも、カンピョウにする
ユウガオは、達磨さんみたいな丸いのばっかりです。この長いのは
ほんとに食えるの?

 どうやらこの長いのは東北と信州で食用にする大長夕顔というも
のらしいです。長い系統のユウガオは苦くて食べられないものが多
いそうですが、大長夕顔には苦みがなく食べられるのだとか。
 

↓ユウガオ断面図
./yugao00c.jpg
 包丁を入れてみました。
 あ、いい香り。
 絹サヤに似た美味しそうな香りがします。

 皮をむいて、ワタ(種のところ)をとって、豚バラ肉のかたまり
と一緒に煮てみました。豚肉とユウガオを炒めてから鍋に移し、水
と、ショウガのかけら・めんつゆ・砂糖を加えて煮込むだけです。

↓ユウガオと豚バラ肉の炒め煮込み
./yugao00a.jpg
 
 わあ、おいしい。
 身がふるふるとやわらかく、豚の脂やうま味とぴったり。
 同じほうほうでトウガンを煮ても美味しいですが、トウガンとも
また違うやわらかさです。

 ところで、この長いのでもカンピョウは作れるのでしょうか。余
ったら実験しようと思ってたんですが、あんまり美味しいので全部
煮て食べちゃいました。

 逆に、カンピョウを作る達磨型の品種を煮て食べたら美味しいん
でしょうか。そのことを考えると夜も眠れず昼に爆睡。とにかく気
になって仕方がありません。

 話が広がりすぎちゃうのでアレですが、ユウガオはヒョウタンと
同種で、苦みがあって食べられないのをヒョウタン、苦みがないの
をユウガオと呼んだりします。でも、ここらへんの呼び分けはかな
り曖昧で、センナリヒョウタンの若い実を奈良漬けにして食べたり
もするそうです。

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 余談ですが、アサガオの仲間でヨルガオという白い花の咲く植物
があります。これの別名をユウガオというんですが、食用にするの
はこれではありません。カンピョウの原料になるユウガオはあくま
でウリ科のユウガオなんです(ややこしい)。

 しかも、源氏物語に出てくる夕顔というお姉さんをヨルガオのこ
とだと思ってる人が多いみたいなんですけど、残念ながらヨルガオ
は熱帯アメリカ原産で、紫式部の頃の日本にはなかったと思います。

 ウリ科のユウガオも白い花を咲かせます。夕方に花開き、朝には
しぼんでしまいます。そんな儚く清楚な花なのに、いずれ大きな実
をつけます。昔から瓜は多産の象徴でした。破瓜という言葉がある
ように昔から瓜は女体と関係しています。それが夕顔という名前に
秘められたロマンなのに、南米渡りのアサガオもどきを想像しちゃ
ったら台無しです。

 ちなみに、平安時代のユウガオは苦い品種だったらしく、花を観
賞して実は乾かして容器にしました(つまりヒョウタンです)。日
本でユウガオを食用にするようになったのは室町・鎌倉時代のころ
ではないかと言われてます。

 まあ、源氏の君は夕顔を充分に堪能されたのでしょうけどね、別
の意味で。
 


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