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赤トンボのいろいろ(1)
和名 アキアカネ
学名 Sympetrum frequens
科名 トンボ科
出現期 夏のはじめに平野部で羽化する
真夏は山のほうで暮らす
秋になると平野部に戻ってくる
食性 成虫は飛びながら別の虫をとらえて食べる
幼虫は水の中で虫や小魚などをとらえて食べる 
採集地 東京都江戸川区


 
 赤とんぼといえば秋の風物詩。秋になると「夕焼け小焼けの赤とんぼ」という歌をつい口ずさんでしまう人は多いはず。
 ところで、赤とんぼって、いったいなんなのでしょう。

「そんなの、赤いトンボに決まってるじゃないか」

 そう思った方、あなたは正しいです。赤とんぼは赤いトンボのことです。
 でも、赤いトンボといったって、一種類じゃないんですよ。世の中には赤とんぼと呼ばれる虫が何種類もいるんです。

 ここでは「赤とんぼ」と呼べそうなものの中から、珍獣様の家のまわりで見られるものをご紹介します。

 まず最初はアキアカネ。尾(腹)が赤く、胸のあたりは赤みが薄く、翅は全体が透明なトンボです。オスは腹全体が赤く、メスは腹の下側が黄色っぽいそうですから、写真のものはメスかもしれません。

アキアカネ
2003年9月29日撮影

 地域にもよると思いますが、東京で普通に見られる赤とんぼはアキアカネじゃないかと思います。童謡『赤とんぼ』の歌詞に「とまっているよ竿の先」というのがありますが、こいつらは本当に竿の先によくとまります。手で追っ払ってもそこらをぐるりひとまわりして、同じ竿にまたとまってたりします。 

 
翅をさげてとまる
2003年9月29日撮影

 とまり方にも特徴があります。翅を水平にひろげてから体の下にだんだん下げていきます。シオカラトンボ(ムギワラトンボ)のとまり方とくらべるとわかりやすいかもしれません。

 
胸の模様
2003年9月29日撮影

 トンボの見分け方は、けっこう難しいのです。昆虫観察のツワモノは、遠目に見た色や大きさ、飛んでいる季節や場所などで、だいたいの見当がつくらしいですけど、ちゃんと見分けるには捕まえて胸の模様を見なければいけません。上の写真は翅ごしなので見にくいかもしれませんが、胸を横から見ると黒いすじがあります。このすじが種類によって違うんです。

 たとえば、アキアカネには、ナツアカネというソックリさんがいます。名前が夏と秋なので、出てくる季節が違うんじゃないかと思う人もいるでしょうが、それは厳密に言えばまちがいです。どちらも夏から秋にかけて見られる赤トンボなのでややこしい。

 でも、胸の模様をくらべれば違いがわかるんだそうです。ナツ・アキともに、胸の横に三本の線がありますが、ナツアカネは真ん中の線が短く、アキアカネは真ん中の線が背中に近いところまで届いています。

 なんてこと書いてる珍獣様も、実はまだ未熟者で、トンボの見分け方がよくわかっておりません。写真のものは真ん中の線が長いので、おそらくアキアカネだと思います。ナツアカネとの比較写真も掲載したいところですが、残念ながら今年は撮影できませんでした。

[参考]ナツアカネ

 下の写真はナツアカネのメス(オスはもっと赤くなります)です。胸の黒い線をよく見てください。途中でぷっつりと断ち切れたようになっています。
ナツアカネのメス
ナツアカネのメス
 
 アキアカネといえば、渡りをするトンボとしても知られています。6〜7 月にかけて平野部で羽化し、そのあと山のほうへ飛んでいって夏をすごします。9 月になると平地にもどってきて飛びまわります。つまり、アキアカネそのものは夏から秋にかけてずっと見られるトンボなのですが、地域を限定して見ると、平野部では主に秋に見られるトンボなのです。

 しかも、アキアカネは夏のはじめと秋では体の色まで変わります。羽化した直後は胸が黄色くて尾(腹)が橙色をしているそうですが、秋になって平地に戻ってくる頃には赤く色づいています。なので、夏休みに山のほうへ行った人は、まだ若くて黄色いアキアカネを、赤とんぼの若いころとは知らずに見ている可能性があるらしいですよ。山で夏のアキアカネをつかまえて、翅にサインペンで印をつけて放してみたいですね。秋に平野部でつかまえた人が連絡をくれるかもしれませんよ。博物館などで大規模に調査をしているところもあるみたいですよ(google>アキアカネ マーキング)。

 

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