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写真 和名 セスジスズメ(幼虫)
科名 スズメガ科
学名 Theretra oldenlandiae
中名 雙線條紋天蛾

撮影日 2007/07/06
撮影地 東京都葛飾区

特徴
・かなり大型の芋虫で終齢になると体長80mmを超える。
・ヤブガラシの葉を食べる(同じ葉を食べるコスズメという似たものがいるので注意)。
・終齢幼虫は茶褐色で背中に黄色っぽい横縞があり、両脇腹に目玉模様が7個ある。
・4齢までは色が黒いが脇腹の目玉模様と尾角が目立つのは同じ。
・若齢のうちは緑色で目玉模様が少ないらしい。
・尻に尾角(びかく)というトゲがあり、先が白い。尾角はただの飾り。人を刺すこともなければ毒もない。
・体に毛はなく、すべすべした手触り。


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写真 2007年7月6日

 ヤブガラシのしげみでセスジスズメの終齢幼虫をみつけた。人差し指との比較で80mmくらいあることがわかる。写真では首をすくめているので、のばせば90mm近くなるはずだ。

 セスジスズメは、たぶん四回脱皮して5齢が終齢だったと思うんだけど(ちがってたらごめん)、4例までは黒く、最後の脱皮をすると左の写真のように茶色くなる。この色合いは、たぶんヘビの何かに擬態してるんじゃないかと思う。

 なお、左が尻で、頭は右側である。

 
写真 これが頭

 丸くて小さな愛らしい頭。胸脚がほのかに赤いところもオシャレな感じかもね。

 
写真 首を伸ばしたところ

 首を伸ばすとこんな感じで頭にむかって胴体が細くなっている。体形がわかるようにこの状態で引いた写真を撮りたいんだけれど、歩き回ってしまうので難しい。

 首を伸ばして歩き回っている様子はヘビと見まごうばかりで、初めてこの虫を見たときは「うわっ、なんて小さなヘビ!」と思ったほど。

 
写真 脇腹の目玉模様

 セスジスズメの幼虫はとても神秘的な目玉模様を持っている。体の両脇に7個ずつ。

 
写真 腹脚(ふくきゃく)

 芋虫の体の後ろ半分についている吸盤状の足のことを腹脚といって、この部分は成虫になるとなくなってしまう。

 その、いずれなくなっちゃう足が、幼虫のうちはとてもしっかりしていて、ヤブガラシの枝をがっちりつかんでいる。

 
写真 尾角(びかく)

 スズメガ科の蛾の幼虫に共通するのは尾角の存在。虫に詳しくない人は、尾角を見て触角だと勘違いして、こっちを頭だと思う人もいるみたい。

 そこまでの勘違いさんじゃなくても、この尻尾に刺されるのではないか、毒があるのではないかと心配する人がいるけれど、尾角はただの飾りなので心配ない。

 セスジスズメの尾角はわりとまっすぐで、長さはそれほどでもなく、先が白いのが特徴。若齢のうちから尾角の先は若齢のうちから白いようだ。

 同じヤブガラシを食べるコスズメは、尾角がゆるいS字になっていて、ブツブツがある。先は白くない。

 
 成虫の写真がほしいので飼うことにした。この子はだいぶ育っているので何日もしないうちに蛹になってしまうはずである。

 餌はヤブガラシ。どこにでもそこにでもある蔓性の雑草。都会の街路樹なんかにもからみついているのを見かける。小さめのペットボトルの蓋に目打ちで穴をあけて、蔓ごといけておく。

 虫を飼うときは餌を活ける瓶の口はかならず塞いでおくこと。セスジスズメくらい大きな芋虫なら心配はないけれど、もう少し小さな虫だと枝をつたって瓶の口から水に入って溺れてしまうことがある。

 あまり歩き回らない虫なら餌をいけた瓶ごとテーブルの上にでもおいて活け芋虫を楽しむのいいけれど、スズメガ類は蛹になるとき土に潜るので、目を離す時は瓶ごと飼育箱にいれて蓋をしておいたほうがいい。

 
写真 糞(ふん)

 スズメガ類の幼虫は、どれも比較的大きな糞をする。でもセスジスズメの糞の大きさは想像を絶するものがある。胴体の太さの二分の一から三分の一くらいありそうな巨大な糞をする。

 これが飼育箱の中に転がっているのを見た時、最初はセスジスズメがひりだしたものだとは思えず、一体どこからまぎれこんだなんの糞なのかとしばらく悩んだほど。

 

 
写真 2007年7月9日

 捕まえてきてから三日たった。昨日あたりから餌を食べなくなり、ヤブガラシの枝から離れて飼育箱の中を歩き回っているようだった。蛹になる場所を探していたのだろう。本当なら土を入れてやるところだが、今回はあえてこのまま蛹化させてみることにした。

 朝見ると、体が縮んで糸でくくったみたいになっている。たぶんこれが前蛹(ぜんよう)という状態だと思う。この状態でもまだ少しは動ける。

 写真ではわかりにくいけれど、芋虫のまわりにかなりの量の液体があった。吐いたのか、排泄したのかはちょっとわからないが、蛹になるのにいらない水分を体から出したんじゃないかと思う。

 このまま湿らせておくと黴びるかもしれないのでティッシュの上にのせることにした。

 
写真 2007年7月11日

 前蛹になってから二日後、見事に脱皮して蛹になった。横ちょに丸まってる黒っぽいものが脱皮殻である。

 
写真 2007年7月12日

 幼虫のときは90mmもあったのに、蛹になると50mmくらいになってしまう。

 蝶や蛾は、蛹になってからも敵に襲われそうになると体をよじって抵抗する。目が見えたりはしないだろうから震動で危険を感じるのだろう。

 蛹が動く様子を動画にしてyoutubeにアップしてみたのでお好きな方はどうぞ。

動き回る蛹の動画(youtube)

 
写真 蛹の頭

 スズメガ科の蛾の蛹は頭の部分がちょっと変わっている。頭の形で蛹のうちからある程度までは種類が絞れるんだけど……写真写りが悪くてイマイチわかりにくいかな。この、顔のあたりのモッコリがセスジスズメの特徴なんだよ。

 
写真 2007年7月24日

 この時期の蛹だから夏の間に羽化するだろうと思っていたら、二週間後に蛾になっていた。この日の夕方見た時はまだ蛹だったのに、ちょっと目を離した隙に立派なお姉さん(お兄さんかもしれない)になっていた。

 見ての通り背中に縦の線がスッキリ入っているのでセスジスズメ。蛹のサイズからも想像がつくと思うけれど、かなり大きな蛾です。戦闘機みたいでちょっとカッコイイ。

 
写真  飼育箱の中で飛び回ると翅が傷んでしまうので、夜のうちに外へ放した。
 

※家のまわりで取った虫です。生き物はとった場所で放しましょう。

 
写真 脱皮殻

 抜け殻。頭のほうが割れてる。

 
写真  猫の爪みたいに曲がってるところは顔モッコリのあと。
 
 生き物を放つときは捕まえた場所で放してください。その生き物のためでもあるし、その土地にもともと住んでいる別の生き物のためでもあり、長い目で見ると人間のためでもあります。もとの場所にはなせない時は死ぬまで飼ってあげてください。死ぬのを見るのがイヤならば旅先で虫をつかまえてくるのはやめたほうがよいです。野菜についてきた虫なども、そこらに放さないでくださいね。
 
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