大工と鬼六
 

 むかし、あるところに流れのはやい川がありました。なんべん橋をかけても流されてしまい、村人たちはこまりはてて、腕のいい大工にどうにかしてほしいとたのみました。

 大工が川のようすを見にくると、流れがはやいだけでなく、ひどく幅があって、こんなところに橋をかけてもすぐにまた流されてしまうだろうと思いました。

 途方にくれて川をみていると、川の中から大きな鬼があらわれて、
「お前が目玉をくれるなら、わしがこの川に橋をかけてやってもいいぞ」
と、いいました。

 大工は、いくら鬼だってこの川に落ちない橋などかけられるはずはないと思って、
「そうだなあ、三日の間に橋をかけられたら目玉のひとつやふたつ、くれてやってもいいかいのう」
と、笑いながら返事をしました。

 次の日また川を見にいくと、おどろいたことに橋がもう半分ばかりできあがっており、三日後には鉄砲水がきてもびくともしない立派な橋ができあがっていました。

 大工がおどろいて橋を見ていると、川のなかから鬼があらわれて、
「どうだ、橋をかけたぞ。お前の目玉をよこせ」
と、いいました。

 大工はすっかりあわてて
「ちょっと待ってくれ。大事な目玉だ、そう簡単にくれてやるわけにはいかん。何かほかのもので勘弁してはもらえないかのう」
というと、鬼は赤い顔をもっと赤くして
「わしは約束どおり三日のうちに橋をかけたのだから、お前も約束をまもって目玉をよこせ。だがもし、わしの名前をいいあてることができたら、目玉をかんべんしてやってもいいぞ」
と、いいました。

 大工は家にかえっても落ちつかず、あてもなく山の中をあるきまわっていると、遠くから子供の声がしました。
「はやく鬼六が目ん玉もってくるといいなあ」
子供たちは、そんなふうに歌っていました。どうやら、鬼の子が歌っているのです。

 次の日、大工が川へ行くと、鬼があらわれていいました。
「さあ、目玉をよこせ。それともわしの名前をいいあてるか」

 大工はよしきたとばかりに腕ぐみをして考えるふりをしました。
「ふむ、お前の名前は鬼太郎だな」

 鬼はカラカラと笑って
「ちがう。そんな名ではない」
と、いいました。

「なら、鬼のおんの助だろう」
「いいや、ちがう。人間ごときが鬼の名をあてられるはずがない」

 最後に大工は、山できいた名前をいいました。
「わかった。お前の名前は鬼六だな」

 それをきいて、鬼はびっくりしたような顔をして、ごぼごぼと川にしずんで二度と出てくることはありませんでした。
 

 
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