鳶不幸
 
 
 あるところに鳶(とび)という鳥の親子がいました。鳶の息子は親のいうことをまともにきいたことがなく、右に行けといわれれば左に行くし、白いのをとってくれといわれれば黒いのをよこすような根性まがりでした。

 鳶の父親が病気になり、自分の命はあとわずかだとさとったとき、せめて墓くらいはまともな場所につくってもらいたいと、根性まがりの息子を呼んで、
「わしが死んだら海になげてくれ」
と、いいました。そういえば山に埋めてくれるだろうと思ったのです。

 ところが、いざ父親が死んでしまうと、鳶の息子はいままでの親不孝をたいへん恥じて、死にぎわの言葉くらい、しっかりきいてやろうと、父親のなきがらを海にすててしまいました。

 けれど、父親のことがどうしても気になるので「海干いよぉ、海干いよぉ」と鳴きながら、海の上をいつまでもまわっていましたとさ。
 

◆こぼれ話◆

 鳴き声の由来譚。鳶は「ぴーひょろー」と鳴くが、聞きようによっては「うみひいよー」と聞こえる。鳥の鳴き声の由来譚ではホトトギスの兄弟も有名。

 
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