ちゃくりかきふ
 
 
 あるところに、ちょっぴり頭のわるい息子がいました。父親は、息子がいつまでたっても一人前にならないので、ここらできびしく商売をおしえようと、茶と栗と柿と麩をもたせて町で売ってくるようにいいつけました。

 はいよ、といい返事をして、むすこは町へむかいました。
 ところが夕方になると、しょんぼりしてもどってきました。

「父ちゃん、ひとつもうれなかったよ」
「そうかいそうか、商売はきびしいものだからな。まあ、はじめてだからしかたがないさね。
 ところでお前、どうやって売り歩いたんだい」
「それがね父ちゃん、はやく売れるといいなとおもって、ぜんぶまとめて "ちゃくりかきふー、ちゃくりかきふはいらんかねー"と呼ばわりながら歩いたんだよ。どういうわけか、みんなへんな顔をしてこっちを見てた」

 これを聞いて、父親は自分の息子のばかさかげんに、すっかりあきれてしまった。
「それじゃ売れるわけがない。茶は茶で別に、栗は栗で別に売らなきゃだめだ」
「なーんだ、そうだったのか。じゃあ、あしたもういちど売ってくらあ」

 次の日、馬鹿息子ははりきって町まででかけましたが、夕方になると、つかれた顔をして帰ってきました。

「父ちゃん、今日もやっぱり売れなかったよ」
「そうかい。それでなんといって売り歩いたんだね」
「父ちゃんのいうとおり別々に売ってみようとおもって"茶は茶でべつー、栗は栗でべつー"って呼ばわりながら歩いたんだよ」

 これには父親も、ただただあきれかえり
「馬鹿につける薬はないというが、本当のことだなあ」
と、いいました。
 すると息子が
「じゃあ、飲み薬をおくれよ」
と、いったとさ。
 

 
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