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頭のいい羊(モンゴル)

 モンゴルに限ったことではなく、たいていの国では羊は臆病な動物だと言われています。その反面、羊が知恵で狼をやっつけるお話もたくさんあります。

 体が弱っているために捨てられた雄羊がいます。腹ぺこ狼がやってきて、もったいぶった様子でこう言いました。
「やあ君、名前はなんというのかい?」

 すると雄羊は少しも慌てた様子をみせずにこう言いました。
「わたしは大頭のトンジ王さ」

 狼はおもしろがってさらにこう言いました。
「ふーん、そうかい。立派な名前だね。ところで君の頭にのってる立派なものはなんだい?」
「これは天の神からさずかった黒い槌さ。悪い狼が来たら、この槌で打ちのめして殺してしまうんだ」

 狼はおどろいて、しばらくの間だまっていましたが、今度は羊の睾丸を指さしてこう言いました。
「じゃあその丸いものはなんだい?」
「これはタマネギさ。狼の肉を食べるとき、薬味にするんだよ」
 これを聞いた狼は、すっかり恐くなって逃げて行きま
した。
 

恒文社『モンゴルの民話』より
   

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