寓  グウ
寓
 鳥には寓が多く、かたちは鼠のようで鳥の翼があり、その声は羊のよう、剣難をふせぐのによい。(北山経一の巻)

 
 挿し絵はあきらかにコウモリだし、平凡社ライブラリーの『山海経』でもコウモリと訳注がついている。
 「寓」という文字は何かに宿ることを意味する文字だが、コウモリが洞窟に住む様子を言ったのだろうか。それとも中国語読みのユィyuという音が鳴き声にでも似ているのだろうか。
 鳴き声といえば、本文には「羊のよう」とあるが、コウモリの鳴き声はあまり羊っぽくはない気がする。コウモリはかなり高い音域で鳴くので、ふつうは人間の耳には聞こえない。たまに人の耳で聞こえるような声でも鳴くが、キイキイ言ってる様子は、とうてい羊っぽくはないと思う。何か別の生き物の鳴き声と勘違いしているんじゃないだろうか。
 険難を防ぐというのがよくわからないが、コウモリは真っ暗なところでも物にぶつからずに飛べるらしいので、剣で襲われてもコウモリのように避けられるという、おまじないなのかもしれない。

 
アブラコウモリ
アブラコウモリ
 日本でいちばん普通に見られるコウモリ。中国にもたくさんいる。コウモリというと山奥に住んでいるように思われるが、アブラコウモリは人家のあるところにしかいない。昼間は家の屋根裏とか戸袋などに住んでいて、夜になると餌をもとめて水辺や林などに飛んで行く。中国では、コウモリを意味する「蝠」という字が「福」と同じ発音なので、縁起のよい生き物とされている。
 なお、コウモリは鳥ではなく、翼はあっても哺乳類である。
 
 
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