はじめに

『山海経』ってなんなのか説明しちゃうぞ。
でも、ほんというとわたくしにも良くわかんないの、わははは。


☆構成と内容
 『山海経』っていうのは、1 冊の本じゃなくて、18 の書に分かれてるみたいなのね。とりあえず前半を『山経』、後半を『海経』って呼んじゃおうと思うわけなの。
山経(前編・5書)
 山を中心に、その地方で産する鉱物や動植物について、淡々と書き記している。
山経5書 南山経
西山経
北山経
東山経
中山経
海経(後編・13書)
 中国の伝説や、周辺の国々の異民族について書かれている。
海外4書 海外南経
海外西経
海外北経
海外東経
海内4書 海内南経
海内西経
海内北経
海内東経
大荒4書 大荒東経
大荒南経
大荒西経
大荒北経
補遺1書 海内経

 
☆書かれた時代

 もっとも古い部分で今から 2200年(いや、もっと?)前に書かれたものなのよ。それから、いろんな人が書き加えていって、ほぼ完成したのが 3
世紀のころというから、約1800年前のことね。日本では邪馬台国が滅びた頃なんだって。
 前半の『山経』と後半の『海経』では形式もちがってて、書いた人も別だろうし、書かれた時代もかなり違うみたいなの。
 

☆書かれた目的
 なんのために書かれたものかは良くわかんないみたい。たぶん地形や各地の産物を紹介する地理の本だったらしいわね。
 もとは絵地図の形で描かれたものに解説文がついていたんだけど、絵地図の部分はなくなっちゃって、解説文だけが今に伝わってるのよ。
 

☆『山海経』の舞台
 南は東南アジアやインド、北はたぶんモンゴルやロシアの一部のことも書いてありそう。西の方はペルシアや、もしかしてヨーロッパあたりまで網羅してそうなの。東はっていうと、どうやら日本のことも書いてあるみたい。
 実は中国の地理を書いたものじゃないって説もあったりして夢はふくらむばかり…


 
 
☆成立の経過

1.最初は絵+解説文の形で作られた
 『山海経』を読んでいると、「木が三本、ナントカの森」ってな感じの説明がでてくるわけなのね。木が三本しかなかったら森ではないと思うんだけど、地図に記号として書き加えたものなら三本で充分でしょ?

 つまり、山海経は絵地図+解説文の形で書かれたモノっぽいのよ。しかも、絵のほうが先だった可能性が高いの。

 2000 年以上も昔の人が書いた地理書なので、記録されている動植物を作者や絵師が実際に見たわけではないと思うの。でも、漢方薬の材料として遠くの国から珍しいものがたくさん輸入されたと思うし、珍しい動植物で乾燥したやつなら見たことあったかもね。だけど、ほとんどの情報源は人づてに聞いたものか、ちょっとしたスケッチ程度じゃないかしら。
 それでもこの時点の絵が残っていれば、ひょっとすると文章だけで読むほど奇想天外な本ではなかったかもしれないのにのに〜。
 

2.オリジナルの絵地図は失われてしまった
 絵は文章を複製するよりも手間がかかったのかもしれないよね。文章なら誰でも書き写せるけど、お絵描きはできないって人多いもんね。文章ばかり書き写されているうちに、セットだった絵地図はどっか行っちゃったみたい。
 

3.後世の人が解説をもとに想像で絵を補った
 ずっと時代が下ってからどっかマニア様が、残された解説文に想像で絵をおぎなったらしいの。いま見られる『山海経』の挿し絵はすべてこれなのね。もともとがあやしげな伝聞を書き記したものだったのに、ここでさらにもとのイメージがゆがんじゃったんだと思うわ。
 おかげでこんなキテレツな本ができあがっちゃったんだから、昔のマニア様に感謝って感じよ。


 
☆参考文献など

 このページを作るにあたって、以下の本をテキストにました。

  高馬三良・訳「山海経」(平凡社ライブラリー)

 文庫本サイズで値段も本体価格 854 円(1994年現在)とお手ごろ。
 日本で最も手に入れやすいものだと思います。全十八巻を収録しているので全訳版といって差し支えないものでしょう。
 ただし、「山海経」といえば後世の人(特に郭璞)がつけ加えた注も含めて呼ぶ場合もあるようですが、この本では一部を除いて注の部分を省略してあるそうです。
 入門書や解説書なら腐るほどあるのに原典に触れられないというものは世の中にたくさんあって、珍獣様は何度も「能書きはどうでもいいから一部引用じゃない原典を読ませてくれ」と叫んだかわかりません。
 もちろん苦労すればなんでも手に入るのだと思います。しかし、それが外国語で書かれたものなら仮に原典を入手できたとしても、解読する前に外国語を覚えなければならず、それでは一部の専門家でなければ手に入らないのと状況はたいして変わらないと思う。
 誰もが文字を読み、あろうことか大学まで行くのがあたりまえという高度な学習レベルを誇る国だというのに、クリープだけでコーヒーを飲んだ気になれといわんばかりの状況に欲求不満を感じなければならないのはどうしたことでしょう。解説書は必要です。でも、原典あってこそ有難みが何十倍にもふくらむものです。
 なので、こうした原典の翻訳に触れられた時に(しかもこの本は気軽に買える値段だし!)、それを訳出した人、出版した人に、「良くやった、誰も認めなくても珍獣様は誉めてやる」などと叫んでしまうのでありますが、わたくしに賞賛されても誰も喜ばないでありましょう。でもいいの。偉いぞ高馬、がんばれ平凡社。
 
 
伝説など
    多田克己/著「幻想世界の住人たちIV(日本編)」新紀元社
B.エヴスリン/著「ギリシア神話小辞典」教養文庫
野口鐵郎(他三名)/編「道教」平河出版
フェリックス・ギラン/編「ロシアの神話」青土社
草下英明/著「星の神話伝説集」教養文庫
村松武雄/編「中国神話伝説集」教養文庫
伊藤清司/著「中国の神獣・悪鬼たち 山海経の世界」東方書店
水木しげる/著「妖怪100物語」「妖怪なんでも入門」「悪魔くんの悪魔なんでも入門」小学館入門百科シリーズ
中山星香/著 井村君江/監修「妖精キャラクター辞典」新書館
別冊太陽「日本の妖怪」平凡社
中村元(ほか二名)/訳注「浄土三部経(上・下)」岩波文庫
「聖書」(そこいらで布教してる人からタダでもらったやつ数種類)
中野定雄/訳「プリニウスの博物誌」雄山閣
マルコ・ポーロ/著「東方見聞録」東洋文庫(平凡社)
ウォリス・バッジ 編纂「世界最古の原典エジプトの死者の書」たま出版
荒俣宏「世界大博物図鑑5 [哺乳類]」平凡社
荒俣宏/編著FantasticDozen第12巻 怪物誌」リブロポ−ト
荒俣宏/編著「アラマタ図像館(1) 怪物」小学館文庫
別冊太陽「日本の妖怪」平凡社
澁澤龍彦/著「幻想博物誌」「夢の宇宙誌」河出文庫
中野美代子「孫悟空の誕生 」岩波現代文庫
「天使のひきだし 〜美術館にすむ天使たち視覚デザイン研究所
黒川哲朗/著「図説・古代エジプトの動物」六興出版
高田栄一/著「爬虫類ウォッチング」平凡社
小野満春/著「おおパンダ!!」翠楊社
大内輝雄/著「羊蹄記」平凡社
C.S.ルイス/作 ナルニア国シリーズ「ライオンと魔女」岩波書店
サン・テグジュペリ/作「星の王子さま」岩波書店
湯本豪一「明治妖怪新聞」柏書房
 
図鑑・辞典・写真集など
    原色学習ワイド図鑑「動物」「鳥」「魚・貝」「岩石・鉱物」「昆虫」学習研究社
動物大百科「霊長類」「家畜」平凡社
動物百科「サルの百科」「謎の動物の百科」「野生ネコの百科」「動物の狩りの百科」データハウス
エーファ・マリア・クレーマー/著「世界の犬種図鑑」誠文堂新光社
エコロン自然シリーズ「動物(1・2)」保育社
難波恒雄/著「原色和漢薬図鑑(上・下)」保育社
小林信明/編「新選・漢和辞典」小学館
磁器大系34「中国の土偶」平凡社
「中国美術 第三巻 彫塑」講談社
図説 世界文化地理大百科「古代のギリシア」朝倉書店
  
 
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