『山海経』で、ネコ科っぽいものは「虎のよう」「豹のよう」の二種類で、豹のような獣のほとんどは、角があったり、ひとつ目だったり、尾が沢山あったりと、いかにも架空のものばかりだ。しかも、これはという手がかりも少なくさすがの珍獣様もお手上げ状態だ。

 
ショケン ショケン
ショケン

 獣がいる、そのかたちは豹のようで長い尾、人の首、牛の耳、ひとつの目、名はショケン。よく舌打ちをする。行くときは自分の尾をくわえ、休むときはその尾をまく。(北山経一の巻)--135

絵・文とも『山海経』より

 
 ネコ科動物というのは目が前をむいて付いているから人面になりやすい。人の首というのはそういうことだろう。また、座るとき、ねそべるとき、長い尾をくるっと巻いていることが多く、これも納得できる。

 ひとつ目というのはいかにもバケモノらしいが、虎じまや豹ぶちのネコ科動物は、額のところに細かいぶちがあつまって、目のような模様を作るので、そのことを言っているのかもしれない。

 わからないのは牛の耳。どうもこれにはピンとくるものがない。
 行くときは尾をくわえるというのも謎だ。猫の尾は歩き回るときに体のバランスをとるためにちゃんと働いていて、長くて邪魔だからといてくわえてしまうことはありえない。強いていうなら、飼い猫などはときおり自分の尾をおいかけてくるくるまわっていることがあるが、そのことを言っているとも思いにくい。

 山猫のたぐいかもしれないが、はたして…?


 
猫(たぶん) 額の模様
とら猫の額の模様は見ようによっては縦になった目のようだ。
ほんとうの目をつぶっていればひとつ目になりうる?
 

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