挿し絵はありません ゴウユ
ゴウユ

 獣がいる。そのかたちはイノコ(豚)のようで人面、黄色い体に赤い尾がある。その名はゴウユといって、声は赤子のよう。この獣は人食いであるし、虫や蛇も食べる。これが現れると天下に洪水がおこる。(東山経四の巻)--262

文は『山海経』より

 
 
ゴウユの想像図ゴウユの想像図
 うーん、黄色い人面豚というとこんな感じだろうか。
 豚のようで人の顔を持ち、さらに黄色いというと猩猩の特徴でもある。猩猩は人食いではないがよく幼女を誘拐するといわれている。

 また、猩猩は真っ赤な髪の毛を長くのばしているが、ゴウユの赤い尾は猩猩のひきずるように長い髪のことかもしれない。

 すると、ゴウユはオスのオランウータンなのだろうか。

 
 ところで、ブタであること、人面であること(つまり人とブタとの合体獣であること)、洪水のまえぶれであることに注目すると、治水をするブタ(イノシシ)の伝説にたどり着く。

 たとえばヒンズー教ではビシュヌ神が鼻から産んだイノシシが水没した大地を牙でひっぱりあげたという伝説がある。
 むかし、ヒラニヤークシャという悪魔が大地を水に沈めてしまった。そのとき、ヒンズー教の三大神のひとりヴィシュヌ神の鼻の穴から一匹のイノシシが現れて、大地を牙にひっかけて海の底から引き上げ、悪魔を退治した。
 この神話はかなり古く、アーリア人がインドにやってくる前からあったと言われている。

 なにもインドのような遠いところまで行かなくとも、中国には広徳王の伝説がある。この王様はブタの姿で治水事業に従事したというのだ。

 そして猪八戒。『西遊記』の登場人物だが、玄奘三蔵の弟子になる前は、天界で水神として働いていたのだ。

 手がかりが少なすぎて断言することはできないが、これらの伝説の原型になるものが『山海経』の時代にあったのではないだろうか?
 

参考>珍獣のアレ「西遊記の源流は山海経にあるのか?
 

 
 
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