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和名 チュウレンジバチ
シリグロチュウレンジ
アカスジチュウレンジ
別名 チュウレンジハバチ
中国名  
科名 ミフシハバチ科
学名 Arge pagana(チュウレンジバチ)
Arge nigrovaginata(シリグロチュウレンジ)
Arge nigrinodosa(アカスジチュウレンジ)
出現期 4〜10 月
食草 バラ
採集地 東京都葛飾区・江戸川区

 
はじめに (2003年9月)
 チュウレンジバチ関連の文章は 1999 年に書いたもので、ハバチについて詳しく書かれた図鑑があまりなかったこともあって、バラの葉を食べる緑の芋虫は、大ざっぱに「チュウレンジバチ」としてきました。けれど、よく似た虫に「アカスジチュウレンジ」というのがいるということで、以前から見分け方が気になって仕方がありませんでした。

 最近になって、うちに飛んでくる成虫が二種類いることに気づき、いくつかの図鑑をあたってみると、どうやらその片方がアカスジチュウレンジらしいことがわかってきました。それで、あらためて見分け方を調べてみると…

チュウレンジバチ
 
幼虫 頭が黒、または黒褐色※
体が緑色をしている
若齢幼虫には体に黒点がない
老齢幼虫には体に黒点がある
バラの葉を食べる
成虫 頭、胸、翅が黒い
腹が黄色い

※>幼虫の頭が必ず黒いかっていうと、そうでもない。同じ親から生まれたと思える集団の中に、頭の黒いものと、黄緑色のものが混ざっていることも多いのが悩ましいところ。
 

アカスジチュウレンジ
 
幼虫 老齢幼虫の頭は黄褐色
若齢幼虫の頭は黒い
体が緑色をしている
体に黒点がある(※)
バラの葉を食べる
成虫 頭、翅が黒い
胸が黄色い
胸の色には変化があり、胸の背側が黒いものなどがいる
腹が黄色い

※>見分け方に体の黒点をあげる資料が多いが、観察してみるとアカスジも並チュウレンジ同様、若齢時代には黒点がないみたい。

参考
 北隆館『日本幼虫図鑑』
 社団法人大阪府植物防疫協会のサイト

 この分類に当てはめてみると、チュウレンジバチ関連のページにある写真の中に、アカスジチュウレンジが混じっていることがわかります。とはいえ、今さら書き直すくらいなら新しくページを作ったほうがよさそうな気もするので、ここはこのまま残し、赤字で注意書きをすることにしました。

[追記]2003年12月
 大阪市立自然史博物館の方にメールで教えていただいたところ、バラにつくハバチで腹がオレンジ色のものは 4 種類いるそうです。

バラにつくハバチ(成虫)の見分け方

 アカスジチュウレンジ
  背が黄色い
  背の一部がオレンジ色
  背中から見て、背全体が黒いのはアカスジではない

 ニホンチュウレンジバチ
  背が黒い
  後足の広い範囲が黄色い

 チュウレンジバチ
  背が黒く
  後足が黒い
  やや山野性で平地には少ない

 シリグロチュウレンジバチ
  背が黒い
  後足が黒い
  産卵管鞘が黒い

 …ということで、アカスジチュウレンジは簡単に見分けられそうなのですが、チュウレンジバチとシリグロチュウレンジは捕まえて尻を見ないと見分けがつかないようです。
 そういうわけで、当サイトで「チュウレンジバチ(Arge pagana)」としているものの中には、ひょっとすると「シリグロチュウレンジ(Arge nigrovaginata)」も混じっているかもしれません。来年はチュウレンジ娘の尻を激写したいと思います。


 
 芋虫といっても蝶や蛾の幼虫とばかりじゃありません。

チュウレンジバチのお子さん
1999年9月20日撮影(葛飾区)
アカスジチュウレンジ?
老齢幼虫だったはずだが頭が黄褐色

 バラの栽培をしてる人にはおなじみと思いますが、この子たちはチュウレンジバチというハバチ(葉蜂)の幼虫です。バラの葉をむしゃむしゃたべて丸坊主にしてしまう憎い奴です。ハチの幼虫のくせに、菜っぱばっかり食ってるんです。

 蝶の幼虫との見分け方は、
 
ハバチ 単眼が1対、腹部の足が6〜9対で爪がない。
チョウ 単眼は6対、腹部の足が2〜5対で爪がある。

だそうです。んな細かいこといわれてもわかるかー!!

S字のポーズ
1999年9月20日撮影(葛飾区)
アカスジチュウレンジ?

 ピントがボケボケですが、気にしてはいけません。
 よく写真を見ると、前の足(これは大人になったときに残る本物の足)でしっかり葉をつかみ、体の後ろのほうを、くにゃっと垂らしているのが……うーん、この写真じゃわかんないわねえ。
 

図解 ハバチの幼虫胸脚でつかまってむしゃむしゃ

 簡単に絵にするとこんな感じ。こんなかっこして葉っぱを食べてる小さな芋虫は、たぶん蝶じゃなくハチです。
 一概には言えないけど、蝶や蛾だったら、胸脚じゃなく、腹脚(大人になるとなくなっちゃう、お腹の部分の吸盤みたいな足)で葉っぱや枝につかまって、上半身を垂らしてるのが多いです気がします。たとえばサザナミスズメのおねえさんみたいに。
 あとはフォースさえあれば見抜けます。

 この見分け方はすべてのハバチに通用するわけではありません。バラにつくハバチの仲間でクシヒゲハバチというのがいますが、幼虫はとても小さくて、姿形もハバチっぽくは見えないので最初は蛾の幼虫だと思ってました。

 とにかく、植物の葉を食べる芋虫や毛虫が必ず蝶や蛾になるわけじゃありません。種類を調べるときは蜂の可能性も疑ってみましょう。
 

にゅーデジカメ購入記念・追加画像!
ごく若い幼虫
2003年7月4日撮影(江戸川区)
チュウレンジバチ?
それともアカスジチュウレンジ?

 上の写真はチュウレンジバチのごく若い幼虫です。こうやって、薔薇の葉に集団でしがみついて暮らし、敵が近寄ってくると尻をあげて威嚇します。

拡大してみましょう

ごく若い幼虫
2003年7月4日撮影(江戸川区)
頭の白っぽいのは足も白い…
やっぱり孵化後(または脱皮後)の時間経過の差か?

 頭の黒いのと白いのは、一体なんの違いなんでしょう。孵化もしくは脱皮後の時間経過の違いでしょうか?

だいぶ育ちました
2003年7月15日撮影(江戸川区)
アカスジチュウレンジ?

 これは終齢幼虫ですかねえ。育つと体に黒い点が出てくるようです。

幼虫の腹脚
2003年7月15日撮影(江戸川区)
ひとつ上の写真と同じ個体

 足の数にも注目してみましょう。胸脚が 3 対( 6 本)なのは蝶や蛾と同じですが、腹の部分を見ると、腹脚らしきでっぱりが、9 対あるのが見えるでしょうか。

 上向きの↑の部分には、はっきりした腹脚があります。右向きの→の部分は、かすかにでっぱりはありますがほとんど退化してます。左向きの←の部分も、あまりハッキリはしませんが、歩く時はこの部も使うようです。

 こうして見ると、図鑑に書いてあるとおり、腹脚の数で蛾類と見分けられそうです。蝶にはこんなに沢山の腹脚はありませんからね。接写のきくカメラってすごいですよ。肉眼では見にくいことまで見せてくれるんだから。
 

 ところで、この芋虫、どんな大人になるんでしょうか。
 親御さんの写真もあるので見てやってください。

 

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