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和名 シオカラトンボ(塩辛蜻蛉)
別名  
中国名 白尾灰蜻
科名 トンボ科
学名 Orthetrum albistylum
出現期 夏〜秋
食草 幼虫は水中でボウフラやイトミミズ、小さな魚などを食べる
成虫は飛びながら虫を捕獲して食べる
採集地 東京都江戸川区

[シオカラトンボについての小難しいお話]



 
シオカラトンボ
2003年8月22日撮影

 トンボには 4 枚の翅がある。一枚一枚の翅に胸の筋肉がつながっているので、それぞれの翅を別々に動かすことができる。前翅をあげる時、後翅をふり下ろす。後翅をあげる時、前翅はふり上げられる。前翅と後翅は、いつも逆の動きをする。だからトンボはチョウのようにヒラヒラした上下運動をしないでまっすぐに安定して飛ぶことができる。

 ある日、川辺を歩いていると、たくさんのトンボが飛んでいた。ほとんどはシオカラトンボだった。その中で、一頭だけ飛び方の違う大きなトンボがいた。実に安定したまっすぐな飛び方をしている。あんまり速く飛ぶのでハッキリとは見えないが、胸が青く、腰のあたりが緑色をしていて、ギンヤンマのようだった。

 シオカラもトンボなので、蝶にくらべたら安定した飛び方をする。けれど、ギンヤンマらしきトンボにくらべたらスピードもそれほどではないし、よく見ると体がわずかに上下左右に振れている。長時間飛び続けることはなく、時おり川辺の草にとまって翅を休めている。

 けれどギンヤンマらしきそのトンボは、川の流れにそって行ったり来たりを繰り返すばかりで、どこにも留まる様子はなかった。たまにホバリングして空中に留まることがあっても、すぐにまた飛んで行ってしまう。

 かっこよさで言えばヤンマの類はトンボの王様だ。せめて一枚なりとヤンマを写そうとカメラを向けたけれど、ピントを合わせているうちに飛んでいってしまう。

 あきらめてシオカラトンボを写した。白っぽい粉のふいた腹が昆布かスルメに似ていると思った。この粉はヤゴ(幼虫)から羽化したばかりのときにはなくて、メスと見分けがつかない色をしているらしい。老熟してくると粉を吹く。いぶし銀のトンボになる。

 シオカラトンボは翅のつけねが透明なのが特徴だ。翅のつけねが茶色いものはオオシオカラトンボという。

 
つかまえてみた
2003年9月13日撮影

 シオカラトンボは止まってるところを手でえいやっとつかめばわりと簡単につかまえられる。

 
つかまえてみた
2003年9月13日撮影

 昆虫の体は、頭・胸・腹に分けられる。トンボの場合頭は誰が見てもわかると思うけど、胸はどこかっていうと足が生えてる部分が胸。昆虫の足は必ず胸から生えてるって昔習った。トンボの胸の中には翅を動かすための筋肉がぎっしり詰まってるらしい。

 そして細くなってるところが腹。ついシッポって呼んでしまうけど、動物のシッポっとちがって中に腸や心臓が入っている。面白いことにトンボの心臓は胸じゃなくシッポ(腹)の先のほうにあるらしい。でもこれはトンボに限ったことじゃなくて、学研の原色学習ワイド図鑑に載ってる解剖図を見ると、ハエやバッタやカメムシやその他もろもろの昆虫は胸でなく腹に心臓があるらしい。なぜかチョウだけは胸に心臓がある。

 心臓だけじゃなく、鼻の穴(気門)の位置に注目してみるのもおもしろそう。トンボは胸の脇に気門があるけどカブトムシは腹に気門がある。昆虫の世界にお医者さんがいたら苦労するだろう。虫によって内臓の位置がぜんぜん違うんだから。

 
トンボの口
2003年9月13日撮影

 トンボは虫をつかまえて食べる昆虫界の肉食動物だから、なんでもバリバリかみ砕けるように立派なあごを持っている。上の写真では閉じているけれど、食事をする時はここがばっくりと開いて獲物にかぶりつく。口をあいたトンボの顔といったら言葉では説明しにくいすごみがある。口の中からいろんなものが飛び出していて、お前どこの星のもんじゃ〜と叫びたくなる。

 
トンボの目
2003年9月13日撮影

トンボの目
2003年9月13日撮影

 トンボの大きな目は複眼といって小さな目の集まりだ。こうやって拡大してみると、ブラウン管のテレビに近付いて見たのと似てる。


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