「お歯黒」の研究 ( No.1 ) |
- 日時: 2003/04/07 13:12
- 名前: ちんじゅう
- 原三正『 「お歯黒」の研究 』
お歯黒だけじゃなく、体の一部に手を加えて身を飾る方法の歴史や、その目的についてまとめた本です。 古代人の鯨面の話や、アイヌやマオリ族の入れ墨のこと、大人になるための通過儀礼としての抜歯のことなども紹介されてます。
『山海経』にある黒歯国の話もちらっとだけ紹介されています。海外東経に黒歯国とあるのを日本とする説があるけれど「この書は元来妄誕の書と評され、あまり信用されていない」だそうです。
この本には、『山海経』以外の中国の古典に出てくる黒歯国のことも書いてあります。
その東南には裸国・黒歯国がある。船で一年ゆけばたどりつく。 『三国志』
船で一年ほどゆくと裸国・黒歯国にたどりつく。 『後漢書』
また南に黒歯国・裸国がある。倭を去ること四千余里、船で一年ばかりゆけばたどり着く。 『南史』
船で一年行ったところ、というのが黒歯国の決まり文句であることをあげて、ポリネシアやマレー、オーストラリアあたりの事ではないかということです。 これは中国人がけっこう遠くのことまで知ってた可能性を示すもので面白かったです。
ずいぶん前に掲示板で誰か教えてくれたことですが、ニューギニアに住むピットフーイ(モリモズ)という鳥が、羽に毒を持っていて、鴆(ちん)という毒鳥の伝説のモデルじゃないかっていうのだけれど、この鳥の存在を古代中国人が知り得たかどうかとゆうのは難しい問題だったりします。 けれど、黒歯国・裸国の「船可行一年至」を信用するなら、中国人はかなり遠くの人と交流してた可能性も出てくるのですよね。
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「お歯黒」の研究 ( No.2 ) |
- 日時: 2003/04/08 22:53
- 名前: ちんじゅう
- 上記の本、ざっと読み終えました。前半で、入れ墨や抜歯の慣習を説明し、お歯黒もその延長として(いやその逆か?)とりあげ、後半はお歯黒の歴史、その意義、いつごろ廃れたのか、お歯黒の出てくる文学作品など、お歯黒一色でぐいぐいとひっぱっていってくれます。お歯黒ふぇちにはたまりませんわね(いないって)。
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『アジア菜食紀行』 ( No.3 ) |
- 日時: 2003/04/08 22:41
- 名前: ちんじゅう
- 森枝卓士『アジア菜食紀行』
珍獣の食卓(再編集版)のネタにならんかと思って借りてきたもので、これから読むところ。とりあえず目次から。
●暑さがスパイスの文化を生む ●菜食主義は文明の象徴 ●仙人になるためには肉食を絶つ ●不殺生戒の重視と因果応報 ●乳製品の代用品としての豆腐 ●精進屋台との遭遇 ●菜食主義の仏教とグループとの出会い ●内臓までちゃんと食べる食文化 ●「米」と「肉」の対立は大化改新から ●肉は生き物の一部という実感
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『アジア菜食紀行』 ( No.4 ) |
- 日時: 2003/04/08 22:41
- 名前: ちんじゅう
- おぼえがき
ジャイナ教はアヒンサーという不殺生の戒律を厳しく守ることで知られているが、肉でも魚でもないのにニンニクとタマネギを食べることを禁じている。なぜかといえば、それらは根っこなので、食べてしまえば植物を殺してしまうからだ。 しかし、ジャガイモを食べることは禁じていない。なぜならジャガイモは地下に沢山出来るので、一部を分けてもらっても植物を殺すことにはならないからである。
水牛の乳は牛の乳よりも脂肪分が濃く、味が違う。インドでは料理によって水牛と牛の乳を使い分ける。
ミルクを熱し、ヨーグルトから分離した水、もしくはクエン酸を加えると乳が凝固する。これに重しをして水を抜いたものをパニールという。
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『アジア菜食紀行』 ( No.5 ) |
- 日時: 2003/04/08 22:41
- 名前: ちんじゅう
- おぼえがき2
日本で最初に肉食を禁じたのは、天武天皇の四年(675年)四月十七日のことで、「牛・馬・犬・さる・鶏」の肉を食べることを禁じるお触れが出たのが最初だという(『日本書紀』)。 牛と馬は労働力になるからで、犬は番犬や猟犬になるから、猿は人間に似ているから、鶏は時を告げるのに役に立つから食べてはいけないということらしい。 それ以外については猟の時期や方法についての制限があるだけで、食べること自体は禁じられていない。 当時、食肉の中心だったのは鹿なので、あくまで役に立つ動物を食べるのをやめようというお触れだったようだ。
日本で本格的に肉食を避けるようになったのは仏教が伝来してからのこと。ただし、それ以前にも喪中のような特殊な状況に肉を食べるのは不敬なこととしていたらしい。『魏志倭人伝』にも喪中に肉を遠ざけるということが書いてある。
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『アジア菜食紀行』 ( No.6 ) |
- 日時: 2003/04/08 22:42
- 名前: ちんじゅう
- うーん、著者の菜食についての考え方としては、肉を食べなくても野菜や穀物で生きてゆける豊かな食文化が背景にある、ということのようです。これには納得なのですが、野菜の豊富さについては、豊富だよと書いてあるだけなのがちょっぴり不満。もっとも、具体例などあげつらねてゆくときりがないほど豊富だともいえるし、そういうことは民族料理の本でも読むべきなのかも。
ジャイナ教徒の菜食の話など面白いことがたくさん書いてあって飽きませんでした。
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『聞き書沖縄の食事』 ( No.7 ) |
- 日時: 2003/04/08 23:04
- 名前: ちんじゅう
- ってなわけで、次。
日本の食生活全集47『聞き書沖縄の食事』
県別に地元の郷土料理を記録した本の沖縄編。これまた食卓(再編集)のネタ用に図書館で借りてきたもの。このシリーズの『聞き書アイヌの食事』は何度か図書館で借りた記憶がある。沖縄編も一度くらい借りたかもしれない。
単なる料理の本というよりは、民俗学というか、文化人類学というか、わりと真面目な本のような気がします。でもカラーグラビアがいっぱいついているので、下手な料理本などより食欲中枢を刺激しまくる悪い本だと言わねばなりません!!!
うーん、沖縄って美味しそう。おこづかいに余裕ができたら(いつできるんだ)『アイヌの食事』とセットで買っちゃおうかなあ…
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『聞き書沖縄の食事』 ( No.8 ) |
- 日時: 2003/04/09 16:00
- 名前: ちんじゅう
- おぼえがき
●豆腐飫(とうふよう)の作り方 那覇や首里だけに伝わる食べ物。手間がかかるのでどの家でも作るというものではない。 豆腐を指の一節くらいの厚さに切り、塩をしてふきんをかけて陰干しする。汁が飛んだら賽の目に切り分けて、さらに陰干し。この作業に二、三日かかる。 味噌とおなじ黄麹と泡盛をまぜ、乾いた豆腐を混ぜて口の広い瓶に入れて寝かす。ここで唐辛子を入れる人もいる。半年くらい寝かせると完成。
売り物みたいにはならんかもしれないけど、自作できないものではなさそうね。でも、できあがったものが中国の腐乳と比べてどうかっていうと疑問よね。中国製なら安いし…
●うずら豆の沖縄名 ハワイ豆(糸満)
●サメ サメのことを沖縄ではサバという(そういえばピナーシサバという大魚の話があったっけ)。さまざまな種類のサバが食用にされる。味のよくないものはかまぼこにされる。味のいいものは煮物などにするが、匂いが強いのでイーチョーバー(茴香葉)と一緒に煮る。
●アヒル(家鴨) 喘息の薬として食べる。
●ヤギ 山羊汁はヒンジャーグスイ(冷えた体を温める薬)といって寒い冬に食べる。薄い塩味にしておろし生姜を混ぜる。桑の葉、ニンニクの葉、よもぎなどを入れて煮る。 山羊のことはビージャーという。ビージャーは妊婦の滋養強壮によく、疲れなおしにもいい。祝い事のあるときのよく食べる。
●あずき(小豆)の別名 アカマーミー(赤豆) アジチャー アチグワチャー(八月豆) 以上、どれも中頭の言葉。なお、おはぎのことはフチャギ、赤飯のことはアカメー(赤飯)という。 やんばるでは小豆と蛸(タフ)を煎じたものを食べると流産すると言われている。わざと食べて流す人もいたという。
●スウティチクジ(ソテツ澱粉) 沖縄では、サツマイモから澱粉を作り保存食にするが、不作だった年はソテツを使うことがある。 ソテツを切ってきて、幹の皮を剥いてしまう。中の白い身を四つ割にして芯をとりのぞく。これをすり下ろし、水をはった桶の中でかき混ぜると澱粉が水に溶けるので、繊維の部分だけ木綿袋などですくい取る。 この水を一晩おいておくと澱粉が沈むので、上澄みの水だけを静かにこぼす。残った澱粉をすのこに広げて天日で乾燥させる。 澱粉は水でといたものを加熱して練り上げるなどして食べる。
●タンポポの別名 マーオーフワー(やんばるの言葉)タンポポの葉のこと。
●ノビルの別名 ハルビラ(やんばるの言葉) ニラのことはチリビラという。
●すべりひゆ ミンブトカー(やんばるの言葉) 身が太いという意味か? 洗ってから茹でて味噌和えにして食べるがヌルヌルしていて好き嫌いが多い。
●魚介類の名前(ネット検索のほうが早そうだが) 蛸:たふ テナガダコ:シガイ スナダコ:イヌージ キビナゴ:スルルー スルルグァー ナマコ:シッキリ
●ナマコの食べ方 シッキリ(ナマコ)は腸を取りのぞいて洗い、時間をかけて水煮する。サツマイモを煮る鍋の、芋の上にのせて柔らかくなるまで炊く。 やわらかくなったら薄く切り、味噌とシークワーサー(ヒラミレモン)で味付けして和え物にする。これをシッキリイエームン(ナマコの和え物)という。 また、脂で炒めてみそ味にして食べるのをシッキリイリキャー(シッキリの炒め物)という。
●シークワーサー(ヒラミレモン) 柑橘系の果物。ヒラミレモン。 調味料として、酢の代わりに使う。やんばるでは芭蕉布の着物を洗うのに使う。
…だいたいこんなもんかな。 食卓(再編集版)用の抜き書きなので、本を読めばもっと面白いことがいろいろ書いてあります。
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